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「アジアの大学、リテラシーの環:d'CATCH 2010 シンポジウム」]

2010.1.30

第18回公開研究会報告
「アジアの大学、リテラシーの環:d'CATCH 2010 シンポジウム」

100130dcatch1.jpg■テーマ
「アジアの大学、リテラシーの環:d'CATCH 2010 シンポジウム」
Asian Universities, Ring of Literacy: d'CATCH 2010 symposium
■日 時 :2010年1月30日(土)10:00-18:30
第1部 d'CATCH 合評会 10:00-14:50(使用言語=英語)
第2部 シンポジウム 15:30-18:30(使用言語=日本語、通訳あり)
■会 場 :神田外語大学ミレニアムハウス(5号館に相当)
      <http://www.kandagaigo.ac.jp/kuis/institution/>
      千葉県千葉市美浜区若葉1-4-1   
シンポジウム登壇者:
○ナナタン・ウォンバンデュ(タイ、チュラロンコン大学)
Nanatthun Wongbandue: Chulalonkorn University, Thailand
○フェイ・マテル(フィリピン、サント・トマス大学)
Martel Faye Manalac: University of Santo Tomas, Phillipine
○ゼン・ジュンヤオ(中国、伝媒大学・南京校)
Zheng Jun Yao: Communication University of China Nanjing, China
○ペク・ソンス(神田外語大学)
Seongsoo Baeg: Kanda University of International Studies, Japan
[コメンテーター] 宇治橋祐之(NHK)
 Yuji Ujihashi: NHK
[司会] 水越伸(東京大学)
Shin Mizukoshi: the University of Tokyo, Japan
■主催:メル・プラッツ、d'CATCH

■概要

新しい年を迎えた最初の公開研究会は千葉・幕張の神田外語大学でd'CATCHプロジェクトとの共催で行われた。

d'CATCH(ドゥキャッチ)はdeCentralized Asian Transnational Challenges(脱中心的なアジアの国境を越えた挑戦)の略でアジア各国の大学生が協働でビデオを制作し、その過程で異文化理解、メディアリテラシーを深めていく教育研究プロジェクトである。2003年度、メルプロジェクトのサブプロジェクトとしてスタートし、7年目を迎えた。

2009年度の制作テーマは「LINK」。タイ、フィリピン、中国、日本の参加学生たちは、さらに「Human relationship」「Family」「Legend」「Technology」「Festival」という5つの題材を扱うグループに分かれた。d'CATCHの活動ではまずそれぞれの国で作品を作り、最終的にいずれかの国に集まって、題材毎に各国の作品をオムニバス映画のようにつないで一つの作品に仕上げ、合評会を行う。本年度、4カ国の学生達は幕張に集まった。

本研究会の開始前には、朝から2009年度の集大成である完成作品の上映と合評会が行われた。一つのチームとして結ばれた4カ国編成・5組の学生のプレゼンテーションを終えたばかり、熱い空気を残したままの会場で、公開研究会は始まった。

●多様な文化の共存のために

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最初に7年間に渡りd'CATCHを進めてきた神田外語大学のペク・ソンスさんからプロジェクトの全体デザインについて次のような報告があった。

大学によって参加の目的や制作スケジュールは異なるが、年に1回集まって協働して映像を制作、発表会を行うということをd'CATCHは続けている。プロジェクトを始めた理由には、グローバル化という社会背景がある。「外」への関心と伝統・歴史など「内」への関心が同時に高まっており、その根底には戦争や植民地、西洋との出会いといった事柄が潜む。一方、国境を越えたメディアの登場に、あふれんばかりの情報が活発に行き交い、誤解が生まれたり、間違いが流布したり、新しい偏見やステレオタイプが生み出されつつある。d'CATCHはこうした複雑に絡みあった現代の社会状況において、多様な文化の共存のための試みとして始まった。

プロジェクトの目標は(1)文化的多様性と文化的共存、(2)マスメディア以外のオルタナティブな表現の探求、(3)アジアにおける人のネットワークの構築、という3点があり、教育と研究の2つのアプローチにより取り組んでいる。教育において難しいのは、映像ソフトの使い方など単純な制作スキルを学ぶことから、いかに異文化の理解、日本人としての自分の相対的な把握へと掘り下げていくことができるか、ということにある。また、この実践をどうオルタナティブなメディア作りへと展開していくことができるか思案している。


●多面的な研究

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続いて学生を指導した各国の教員から、それぞれの関心にひきつけた報告が行われた。中国の伝媒大学・南京校のゼン・ジュンヤオさんは、各国の学生の表象は「プレ・モダナイゼーション」「モダナイゼーション」「ポスト・モダナイゼーション」に分類できると述べ、学生たちが制作した映像を分析した。フィリピンのサント・トマス大学のフェイ・マテルさんはプロジェクトで身につく学生の学びが「能力」「責任」「思いやり」という自分の大学の教育指針と重なると指摘。さらにそこでの学びのサイクルが「理解する」「共有する」「フィードバックする」「普遍化する」「応用する」という5つの学びのステップとしてまとめられると報告した。タイのチュラロンコン大学のナナタン・ウォンバンデュさんは、世界におけるチュラロンコン大学のランキングを紹介しつつ、こうした国際プロジェクトを実施することは大学の評価にとって特に国際化という点で非常に重要であると述べ、大学ではこうした文化的実践があまり多くはないと指摘した。

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●コメントとディスカッション

コメンテーターのNHKの宇治橋さんは、学生たちが行ったことを「作る」「見せる」「再構成する」「見せる」と整理し、一旦それぞれの国で制作した後に4カ国のメンバーで集まって一つの作品としてまとめ直すことで、「理解→葛藤→理解」という発見的な学びの循環が生まれる、と評価した。また、字幕の入れ方などオーディエンスを意識した映像作りについて、放送のプロとしてのアドバイスも行った。

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会場を交えたディスカッションでは、会場からいくつもの質問が寄せられ、それに答える形でプロジェクトに参加した学生も活発に意見を述べた。「一つの作品としてまとめ直すことで"彼ら"の作品が"私たち"の作品になった」 。自分達の作品についての問いに答えていく中で気づきが生まれ、学生のみんなには実践したことをふり返る貴重な時間となったように思う。熱気が冷めないまま研究会は終了した。

 報告者:土屋祐子(広島経済大学/メル・プラッツ運営メンバー)


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