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メル・エキスポの報告
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「メディア・クライシスとメディアリテラシー −マクロとミクロとワークショップ−」]
2009.1.24
第11回公開研究会報告
「メディア・クライシスとメディアリテラシー −マクロとミクロとワークショップ−」
■日 時:2009年1月24日(土)14時〜18時■場 所:東京大学本郷キャンパス工学部新二号館9階93b
■テーマ:「メディア・クライシスとメディアリテラシー
−−マクロとミクロとワークショップ−−」
■タイム・テーブル
14:00-14:05 ご挨拶(メル・プラッツ事務局)
14:05-14:35 プレゼンテーション(1)「マクロの視点から」
砂川浩慶(立教大学、メル・プラッツ運営メンバー)
14:35-15:05 プレゼンテーション(2)「ミクロの視点から」
水島久光(東海大学、メル・プラッツ運営メンバー)
15:05-15:20 休憩
15:20-17:30 ミニ・ワークショップ「メディア・クライシスを超えて」
17:30-18:00 ワークショップの振り返り
司会:本橋春紀
(放送倫理・番組向上機構、メル・プラッツ運営メンバー)
■概 要:
「崩壊」「危機」「減益」このような言葉が日本のあちこちで聞かれる中、マスメディア業界もこれらの言葉にさらされ、新たな地平を切り開いていかなくてはならない局面にきています。こうしたマスメディア業界の波紋は、これまで人々の生活に密接に結びついてきた分、業界を超えてたくさんの人たちにたくさんの課題を投げかけていくことでしょう。
マスメディア業界の「クライシス」は、私たちを取り巻くメディア環境全体の危機を意味するのでしょうか。あるい はメディア環境が変容し、そこから何か新しいものが生まれてくるためのきっかけとなるのでしょうか。私たちはそれを、単に業界の問題としてばかりでなく、 メディア環境全体の構成にかかわる問題としてさまざまな角度から考えていかなければなりません。その中で改めてメディアリテラシーについて考えていこう、 私たち一人ひとりができる何かを模索しよう、というのが今回の公開研究会でした。参加していただいた皆さんの中に、今回はマスコミ関係者が多かったことが このテーマの大きさ・重大さを感じさせたように思います。
◆なぜ今メディアリテラシーなのか、マスメディアの現況
まず、マスメディアがおかれているマクロな状況について砂川浩慶さん(立教大学)から問題を提起していただきました。
【砂川さん要旨】
近年の広告費が上昇している一方、テレビ・ラジオ・新聞・出版といったマス4媒体のそれは上昇するどころか下がっている。
マス4媒体に代わって衛星メディア関連・インターネット・プロモーションメディアの広告費が増加傾向にある。広告費の割合で、マス4媒体が50%を切る時
代が危惧されている。
マス4媒体の中でも雑誌・ラジオに関しては7年連続で広告費が減少。2008年は大きな広告主である電気、自動車メーカーなどの不振のあおりを受け、マス4媒体広告費の減少記録が塗り替えられていくことは明らかである。
マスメディアとしての役割を十分果たし、その地位も信頼もゆるぎないものと感じさせていた新聞でさえも、弱体化が目に見えるようになってきた。閲読層の高齢化も大きな問題である。
テレビ視聴の現状も深刻だ。世界的にも視聴率自体は高いが、視聴者の高齢化が進み、若者のテレビ離れがみられてきている。 マス4媒体を筆頭にメディアが危機に直面している、メディアクライシス時代に、業界の再編が起こっている。朝日・日経・読売新聞社の新聞販売・インター ネット・災害時対策などでの連携。地方新聞社は連携してニュースサイトを開設。フジテレビやTBSが相次いで持ち株会社へ。そして、在京キー局にはコンプ ライアンス室が置かれるなど、本来は公共性を保つためのものだったはずが、気がつくとグループの防衛力強化のために形を変えているだけのように感じる。
フリーペーパーなどメディアの無料化が加速している今、若者たちに「タダで手に入らない情報の価値・意味」をどのようにしたら伝えていけるのか。今 こそ、マスメディアは自分たちが何のプロであったのか、自らを客観視すべきであり、市民にとっては、こうしたマスメディアをこれからどのように使っていく かを改めて考える必要があるのではないか。 情報がたくさんある中で、自分の関心のない分野にどのように興味を持たせていくのか、これが薄れていくことへの危機感。 今まさにメディアリテラシーが求められているのだ。
◆メディアクライシスとメディアリテラシー
続いて、水島久光さん(東海大学)が地域で取り組まれているミクロな実践を「メディア状況の組み換え」の観点から報告してくださいました。
【水島さん要旨】
今回の私がお話したいのは「メディアを組み立てなおしましょう」ということ。メディアが断片的なものの見方をされているの
はなぜなのか、それでいいのだろうか。また、デジタルの風が吹く中で、メディアクライシスがデジタル化のせいにさせられているけど、実際そうなのだろう
か?という部分を問題提起したい。
まず、クライシスの構図をハーバーマスの理論で考えていく。文化・社会・パーソナリティという3つの領域でシステム的合理化が加速していくことで、 文化の再生産などができなくなっていく。これがメディアクライシスを深刻化させていっているのだ。では、それぞれの中でもっと主体的にかかわりをもってい けないのだろうか?
そこで、地産地消のメディア回路の構築をめざし、かつては産業等で日本の中心的役割を果たした北海道は夕張、鹿児島は鹿屋、垂水地域をモデル地域 に、メディアを「生活社会」に取り戻すプロジェクトを実施した。夕張では石炭博物館の映像資料をベースとして「地域アーカイブス」の構築のための作業をし ている。鹿屋では、昭和19年におきた「第六垂水丸遭難事件をめぐるドキュメンタリーの制作、またNPO型ラジオ局をサポートしている。
大切なのは、そこで中心となる人たちはみな「地域の人々」だということ。現在のマスメディアの中央から地方への構図とは別の「地方からはじめるネットワーク作り」を構築し、現在も活動している。
◆「メディア・クライシスとメディアリテラシー
−−マクロとミクロとワークショップ−−」
後
半は、砂川さんと水島さんの報告を踏まえ、参加者をいくつかのグループに分けてミニ・ワークショップを展開しました。
グループには、行政/ネットメディア/市民メディア/先生・親/新聞/テレビとそれぞれ役割が割り振られ、その役割を担う人の立場から、メディアクライシ
スとは何なのか、それをどのように乗り越えたらいいのだろうかを話し合いました。
〔行政〕
マスメディアの機能不全や、ネットによるタラツボ化などのジレンマがある。5人なのか、1億人なのかノ。社会的関心の低下。またメ
ディアからの疎外、メディア間のたたき合いノ。こういった問題を解消していくには、メディアを適当な規模に小さくしたり、またみんなが集まる場を作り出
す、つまりはリアル化していくことが大切なのではないか。行政はこの中でデザインしてくべきである。
〔ネットメディア〕
ネットメディアとは、社会的責任がないのにパワフルなものである。にも関わらずネット作法が確立されていない。またコン
テンツに対する距離感があいまいである。ネットメディアはこれらの状況が見えていないことが問題ではないか。そこで、信頼・責任を担保していくことが必要
だと思う。そのためには、疑問点を出すための業界団体を作る必要があるのではないか、という意見が出てきた。そこでは、規制は必要なのかなどといった議論
があった。ネットの中に害を害と知りながらちりばめておくことで教えられることもあるのではないか、という話もでていた。
〔市民メディア〕
このグループでは、市民メディアの立場に立つ難しさがあった。危機を乗り越える、という前に色々な市民メディアの存在があ
り、目的の違う市民メディアをひとくくりにできるのか、といった議論になった。現在起こっているクライシスはマスコミのクライシスであり、これを果たして
市民メディアが拾っていくべきなのだろうか?まずは、マスコミと市民メディアが互いを知り、共存することが必要ではないか。
〔先生・親〕
子どもたちに対するメディアクライシスを考えていった結果、常に自分たちが上から目線で物事を考えていっていることに気付い
た。私たちが考えるクライシスは果たして子どもたちにとっても同じくクライシスなのだろうか。現代は確実に情報過多の時代。自分たちが学生だったことには
なかったメディアが、子どもたちにとっては既存のメディアとして存在している。私たちが感じた「新しく誕生したメディアの特性」などに子どもたちが自然と
気付くことはないのではないか。クライシスには世代間ギャップがあるのではないか。
〔新聞〕
ニュースに求められているものが変化しているのではないか、という話が出てきた。一つのものを詳しく掘り下げている新聞ではなく、
一つ一つの話題は短くとも、速報性のほうが重視されてきているのではないか。速報性では新聞は勝てない。質で勝負するのが新聞である。そのためには、新聞
の作り手(記者たち)と販売者との意識の格差を是正していくことが必要なのではないか。また、新聞広告に連続性を持たせるなど、定期購読の楽しみを増やし
ていくことも効果が見込めるかもしれない。
〔テレビ〕
このグループは偶然にもテレビ局の人が多く集まったこともあり、自然と視聴者の質問にテレビ局の人が答える、といった時間になっ
ていった。回答がテレビ局側の都合のいい解釈のもとに成り立っている、なかばいいわけにも聞こえかねないものだった。そこで鮮明になったのは、視聴者のた
めに作っているはずの番組などが視聴者の求めに合致しておらず、それを視聴者は受け取っているだけであったということ。互いの歩み寄りが必要なのではない
か。
◆終わりに
会の終了後、水島さんが報告の中でできなかった映像の上映を行いました。普段はまっすぐ懇親会に向
かう人たちがほとんどスクリーンの前に集まり、水島さんのお話を聞きながら作品に見入っていました。きっとワークショップを終えて、興奮さめやらぬところ
で、個々の振り返りがなされていたのだと思います。自分の実際の立場で、また普段は考える機会のなかった立場でメディアクライシスについて考えていったと
き、改めてメディアリテラシーの存在に気付いた方も多かったと思います。
短い時間ではありましたが、実際に普段接することのない職種の人たちとも交流しながらこうして議論を深めることの大切さをしみじみ感じた時でした。(報告者:山内千代子/メル・プラッツ運営メンバー)

