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「メディア・エクスプリモの挑戦:学環えんがわワークショップから考える」]
2008.3.28
第7回公開研究会報告
「メディア・エクスプリモの挑戦:学環えんがわワークショップから考える」
■日 時:2008年3月28日(金)17時〜20時■場 所:東京大学大学院情報学環福武ホール・福武ラーニングシアター
■参加者:約80名
■テーマ:「メディア・エクスプリモの挑戦:
学環えんがわワークショップから考える」
<タイムテーブル>
全体司会:水越伸(東京大学)
17:00-17:10 メル・プラッツからのごあいさつ
水島久光(東海大学)ほか
17:10-17:40 メディア・エクスプリモとはなにか
須永剛司(多摩美術大学)、
阿部純・鳥海希世子(東京大学)
17:50-19:20 ワークショップ「福武あいうえお画文」
進行:鳥海希世子ほか
19:20-20:00 文理横断型研究の展開:批判的メディア実践の軌跡
進行:水越伸
登壇:敦賀雄大(多摩美術大学)、
友部博教(産業技術総合研究所)、
沼晃介(東京大学)、
鳥海希世子
■概 要:
桜は満開直前。第7回のメル・プラッツ公開研究会は、2008年3月28日(金)の17時から20時まで、東京大学(本郷キャンパス)にて開催されました。2日前に竣工したばかりの情報学環福武ホール・福武ラーニングシアター(http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/)を会場とした今回の参加者は86名、設計者の安藤忠雄氏がいらっしゃるという噂もありました。
研究会は水島久光さん(東海大学、メル・プラッツ運営メンバー)と境真理子さん(江戸川大学、メル・プラッツ運営メンバー)の挨拶に始まり、続いて 水越伸さん(東京大学、メル・プラッツ運営メンバー)から情報学環・福武ホールについての簡単な紹介と、今回のテーマ「メディア・エクスプリモの挑戦:学 環えんがわワークショップから考える」の趣旨説明がありました。
□第1部 メディア・エクスプリモとはなにか
1つ目の報告は、情報デザインがご専門の須永剛司さん(多摩美術大学)による、メディア・エクスプリモ(http://www.mediaexprimo.jp/)の全体像の紹介でした。須永さんの報告要旨は、以下の通りです。
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メディア・エクスプリモの正式名称は「情報デザインによる市民芸術創出プラットフォーム」で、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造 研究推進事業(CREST)の一つに位置づけられている。CRESTには様々な研究テーマがあるが、メディア・エクスプリモはメディアと芸術の領域に焦点 を絞っている。具体的には「デジタルメディア作品の制作を支援する基盤技術」という研究領域の一つとして、2006年10月から5年半にわたって進める予 定である。
メディア・エクスプリモは、「情報があふれかえる社会」から「表現が編みあがる社会」を作り出していくことを目指している。それはコマーシャルな表現でも
なければ、プライベートな表現でもない、パブリックな表現に基づく市民参加型の社会のことである。そこで日々の物語を集め、並べて、組み立てて、自然にそ
して豊かに楽しめる場を創り出そうとしている。
メディア・エクスプリモは、情報デザイン研究(須永剛司グループ)を中心に、インターフェースとSNSの技術的研究(西村拓一グループ)、人口知能 と知識支援システムの研究(堀浩一グループ)、人文社会的なメディア研究(水越伸グループ)の4つが、文理横断的、学際的に協働している。これら芸術系・ 工学系・人文系の研究は、「ワークショップ」という方法によって結びつけられている。そしてメンバーが開発した技術プログラムや文化的プログラムを実社会 に投入しながら、市民参加型のメディア表現の場を創っている。メディア・エクスプリモでは、これを「批判的メディア実践」と呼び、様々な活動を行ってい る。
*
2つ目の報告は、鳥海希世子さん(東京大学大学院、メル・プラッツ運営メンバー)と阿部純さん(東京大学大学院)による、メディア・エクスプリモでのワークショップの事例紹介でした。お2人の報告要旨は、以下の通りです。
*
YouTubeなどCGM(Consumer Generated Media)に象徴される「個人表現の集合」と、「集合的な表現」を区別してみたい。個人表現の集合においては、表現の幅が自由であるがために、かえって 偏りが生まれることがある。他方の集合的な表現においては、他者とのつながり方が試行錯誤されるため、メディア表現がコミュニティと結びついたものとな る。その意味で集合的な表現とは、いつの間にか細くなってしまった社会との結びつきを回復する活動のことである。
集合的なメディア表現は、「共同」「循環」「持続」という3つのキーワードにおいて考えられる。共同とは、個人表現と集合表現の往復を目指すことで ある。循環とは、それらの表現の異化や組み替えなど、俯瞰的な視座の獲得を目指すことである。持続とは、お題やテーマなどを共有することで、より多くの人 々の参加に開かれた表現活動を目指すことである。
このようなキーワードからなる集合的なメディア表現は、技術の過度なブラックボックス化を問題にし、人々におけるテクノロジーへの試行錯誤を見出 し、消費者とは異なる「表現者」を想像する契機にもなっていくだろう。「武蔵大学ケータイ・ワークショップ」、「学環えんがわワークショップ」、「湘南あ いうえお画文」は、その事例として試みたものである。
武蔵大学ケータイ・ワークショップは、2007年10月から12月にかけて、「メディアリテラシー論」(履修者は230名)という授業のなかで3回 行った。1回目は、大講義室での授業をケータイ記者としてレポートするものである。2回目は、メディアのなかの武蔵大学をレポートするものである。3回目 は、授業時間内に自由に取材を行い、3枚の組写真を使った武蔵大学のドキュメンタリーを作ることである。これらの試みから、プライベートな表現やコマー シャルな表現ではないパブリックな表現として、ケータイというメディアを理解してもらうことを目指した。
学環えんがわワークショップは、2008年3月21日から28日にかけて、東京大学大学院情報学環・福武ホールのテラスで行った。これは「環」というお題
を人々が共有することで、写真とテクストを組み合わせた「画文」メッセージを作り、その投稿を積み重ねていくワークショップである。投稿された画文メッ
セージはデジタル・アーカイブ化され、様々な物語に編み上げられて、福武ホールの「学びの壁」に投影された。このような試みにより、不特定多数の他者を対
象にしたワークショップでは、いつの間にかマスメディア的な表現に近似していくことがわかった。またこのようなワークショップには、適度なコミュニティが
必要だということもわかってきた。
湘南あいうえお画文は、2007年12月の2日間にわたり、藤沢市で行ったワークショップである(参加者は9名)。これは個人やグループの写真から 作る「知られざる湘南姿」、事前に用意された古い写真から作る「帰らざる湘南姿」、ワークショップ当日に用意された全ての写真から作る「行く街、来る 街」、ワークショップの記録自体をも画文にしていく「湘南あいうえお画文」の4つからなっている。これらの試みにより、ワークショップ参加者は、同じ写真 が違う文脈のなかでも使われていくことなどを再確認した。これは遊びによって共同的に表現を組み替えていく活動であり、同じ写真が2度目以降の表現へと接 続されていくことは、集合的なメディア表現における循環や持続を確認する活動でもあった。
*
ここで、一旦休憩。福武ラーニングシアターの入口付近には、UT cafeベルトレルージュ(福武ホール内のカフェ)の珈琲が用意され、しばし歓談の場が持たれました。□第2部 ワークショップ「福武あいうえお画文」
第2部では、参加者が10グループに分かれ、既に用意された60枚の写真を2つのグループで共有しながら画文を制作する、「福武あいうえお画文ワークショップ」(コーディネータ:鳥海希世子さん)が行われました。
1つ目は、写真のみを使った「なんでもグラデーション」というお題です。参加者は、5枚の写真を選びます。次に、「色」のグラデーションや「意味」 のグラデーションなど、自由に写真を組み合わせて何らかのグラデーションを考えます。そして最後に、それぞれに「○○グラデーション」というタイトルをつ けます。
会場では、「スピードグラデーション」「子どもの成長グラデーション」「そして誰でも...グラデーション」「体感温度グラデーション」「愛とグラデー ション」「平和な一日グラデーション」「青春は短いグラデーション」「カウントダウングラデーション」「神様のグラデーション」「水滴から素敵グラデー ション」などの作品が出来上がりました。またこうした試みにおいては、グラデーションの最後に「オチ」を付けたくなってしまうことなども確認されました。
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つ目は、「環」をお題にした、写真とテクストを使う画文ワークショップです。参加者は、5枚の写真を選びます。そして「ふくたけ+X(任意の一文字)」を
共通ルールとして、写真とテクストを組み合わせたあいうえお画文を制作します。なおその際には、「なんでもグラデーション」で使用した同じ写真を、少なく
とも1枚入れなくてはなりませんでした。
会場では、(テクストだけではわかりにくいのですが...)「ふくたけな」「まふぐけた」「ふくたけめ」「ふくたけで」「たけふあく」「かふくたけ」 「ぶろぐだけ」「たけだふく」「ふぐたけあ」「ふけたぼく」といった福武あいうえお画文が出来上がりました。またこうした試みでは、同じ写真が2度目以降 の表現において、先行する意味とは異なる意味を伴いながら、接続されていくことなども確認されました。
□第3部 ディスカッション「文理横断型研究の展開:批判的メディア実践の軌跡」
第3部では、沼晃介さん(東京大学)、友部博教さん(産業技術総合研究所)、敦賀雄大さん(多摩美術大学)、鳥海希世子さんが登壇され、水越伸さんを司会にディスカッションを行いました。発言の概要は、以下の通りです。
沼さん:人工知能研究の一分野として、創造活動の支援を行っている。それはモヤモヤしたものを、カタチのあるものへと結晶化させていくような作業で ある。そこではカタチをばらすことと、カタチを組み替えることが循環しており、その循環の技術的な支援を行っている。その具体例の一つが「湘南あいうえお 画文」であり、人々に考えるヒントを与える仕組みを提供した。今後もワークショップという場における、創造活動環境全体のデザインを行っていきたい。
友部さん:学環えんがわワークショップで、学びの壁に投影した「シャワー&花火・スライドショー」を制作した。文化的なプログラムとして何ができる のかに関心を持っており、「送る」「見る」「降り積もる」「つながる」といった一連の過程を可視化することで、他の人々もすぐに参加できるようにしたかっ た。見せ方や動きのデザインでは、Flashのアニメーションを利用した。コンテンツの取得・管理・加工では、SQLやCGIなどの技術を利用した。アニ メーションの動的な生成には、FlashやAction Scriptなどを利用した。
敦賀さん:情報デザイン研究という立場から、見せ方や動きのデザイン、フライヤーやカードのデザインなどを担当した。今回は「変化」がキーワードで あり、関係性を解釈するためのサポートを目指した。個人的には、見せる相手が明確でないと、自由には表現できないことに関心を持っている。異分野グループ との共同や、知恵を持ち寄って「もの」を創り出すことにより、デザインの可能性が広がることに期待している。
鳥海さん:研究グループ間で、お互いに言葉が通じないことを確認することから始まった。情報技術とメディア表現の組み合わせにはいろいろあるが、一 度ワークショップに参加した人々が、また別のワークショップに参加したりするように、効果が波紋のように現れてくると嬉しい。また日常のなかに、ワーク ショップを組み込んでいけないかとも考えている。そのためには、一人ひとりがメディア表現のためにカスタマイズできるような、キット作りも重要ではないか と思う。
水越さん:メディア・エクスプリモでは、プロの表現とは別に、市民の表現の可能性に関心を持っている。文理横断的で学際的な研究協力体制は、そのためにある。そこで2つの点を、強調しておきたい。
一
つには、各研究グループがそれぞれにアイデアを持ち寄り、そこで何かを作ることが目的なのではないということである。むしろ私たちはこうした活動を通し
て、それぞれの研究が自己反省できるような仕組みを作ることを目指している。共同的な研究や学際的研究の方法論とは、このように自己反省を組み込んだ、自
分自身を疑う方法である。したがってワークショップや技術的な開発なども、自分自身を疑いながら、試行錯誤されるものであろう。
もう一つは、GoogleやYouTubeといったグローバルなコミュニケーションと、ケータイなどパーソナルなコミュニケーションといった両極化 したコミュニケーションの間に、パブリックでコミュナルなコミュニケーション空間を作っていくことである。それは、マス的なものと、プライベート的なもの との間に、もう一つの空間を設けることでもある。さらに言えば、そのコミュニケーション空間は、文系と理系が共に何かを作りながら、自己反省的に考えてい くものでもある。
このような2つの点を踏まえつつ、これまでの試行錯誤を、地方民放局や公民館・美術館などでの活動と結びつけて理解していくことが重要である。4月のMELL EXPO(メル・エキスポ)2008は、その具体的な姿であり、これもまた参加型イベントなので、ご興 味のある方々は是非とも参加して頂きたい。
□おわりに
最後に、水島久光さんより北村順生さん(新潟大学、メル・プラッツ運営メンバー)へとオーガナイザー(事務局)が変わることが伝えられ、4月26日(土)〜27日(日)の「MELL EXPO(メル・エキスポ)2008」での再会をみなさんと約束して、公開研究会の幕を閉じました。
(報告者:加島卓/メル・プラッツ運営メンバー)

